大本京のヴォイトレ格言〜その34


もう15年くらい前の

生徒さんのお話です

 

彼女はとてもあっけらかんとした性格と

生活習慣がゆるめの

自由奔放な子でした

 

でも、歌はうまかった

 

本当に

あの当時

あの年齢で

こんなにうまい子がいるのかというほど

うまかった

 

太く高い声は

まっすぐどこまでも伸びやかで

ゾクゾク鳥肌が立つので

「エクスタシーヴォイス」と

名付けてあげたほどでした

 

 

レッスンには

いつも遅刻ギリギリで来て

起きたばっかりの

ボサボサの髪

彼氏が教室のビルまで

バイクで

迎えに来ていたときもあった

 

 

3ヶ月くらいレッスンをしたところで

最大手のレコード会社と

有名プロダクションに直接

歌を聴いてもらう機会を

作ってもらうことになった

 

ちょうど同じタイミングで

秋田に住む

彼女の母親から手紙が来た

「歌手になるのを諦めさせて欲しい

迷惑をかけることになってしまう」

という内容だった

 

 

彼女は結局

デビューできなかった

 

母親の手紙は関係ないが

 

彼女自身が

プロになるということを

いろいろな意味で

理解できていなかったのだろう

 

時間を守らなかったり

宿題をしてこなかったり

期待を簡単に裏切っても

言い訳をしたり

まったく悪びれた様子はなかった

 

 

何も見せてはくれなかった

 

 

関係者の方々には

プロジェクトチームの結成など

大変なご迷惑をおかけしたが

メジャーデビューの話は

一瞬で自然消滅した

 

 

彼女からの連絡も途絶え

やがて

行方不明になった

 

 

もう

アラフォーになっているはず

ときどき

どうしているかなと

思い出す

 

 

逸材

だったかもしれないが

「心技体」

揃わなければ

やっぱり

逸材ではない

のだ

 

 

探せば彼女ほどの実力の子は

今の世の中

いくらでもいるだろうな

 

カラオケの番組を見ながら

そんなことを

思った

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